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排気口フィルタ事件(H17.10.27 知財高裁 平成17年(ネ) 10066) [判例]

・「鉤状突起」という記載の解釈
被告製品は面ファスナのフック面に使われる逆J字状のフックを使用しており、これが特許請求の範囲に記載されている「鉤状突起」に該当するか否かということが争点となった。
面ファスナは特許出願前から広く利用されていた。

この事件については、「公知部分除外説」を理解する必要がある。
・公知部分除外説
クレーム解釈の手法として、以下の2通りの考え方があったらしい。
(1)クレームに含まれる公知部分を除外して、クレームの字句通りのものに技術的範囲を制限する
(2)クレームに記載されていない要件を付加して技術的範囲を制限する
ただしこれは「キルビー判決」「特許法第104条の3」よりも前の話である。
上記(1)、(2)を読むと、自然と無効理由が含まれる特許なのではないかと想像することになる。

また、関連して「キルビー判決」「特許法第104条の3」に触れておくのが良い。
・キルビー判決
以下は青本からの抜粋。
「特許の無効審決が確定する以前であっても、特許権等の侵害訴訟を審理する裁判所は、審理の結果、当該特許に無効理由が存在することが明らかであると認められるときは、その特許権に基づく差止め・損害賠償等の請求は、特段の事情がない限り、権利の濫用に当たり許されない旨判示し、特許権に基づく差止め・損害賠償等の請求を訴訟物とする侵害訴訟における理由中の判断において無効理由の存在の明白性を判断する限度において、特許の無効理由の存否に関する裁判所の間接的・相対的な判断の余地を例外的に承認した。」
これを踏まえ、平成16年改正において、特許法104条の3が追加されることとなる。

以上に記載した流れを考えると、訴訟という観点においては、現在においては本事件のように裁判所が判断する可能性は低いのではないかと思われる。すなわち、まずは特許の有効無効について審判で争い、そのうえで侵害の有無を判断するという流れになるのではないだろうか。
一方、特許明細書を作成するという観点で本事件を見ると、しっかりした権利を得るためには、クレームに記載された語句の詳細な説明が明細書に記載されている必要があったのではないかと考える。図面の記載のみから特許請求の範囲を解釈することは、特許法70条2項の記載を考えても無理があると思われる。

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インクタンク事件(H18.1.31 知財高裁 平成17年(ネ)10021) [判例]

「インクタンク事件」と称する事件は多数存在するが、タイトルのカッコ書きを検索すれば様々な情報を得ることができる。

要するに、インクジェットプリンタのインクカートリッジのインクを詰めなおして販売する行為が特許権の侵害に当たるか否かが問題となり、特許権の消尽とはどういう定義に基づくものかが争点となったものである。
特許権の消尽については、他にBBS事件が非常に重要な判例である。
いずれも検索すれば多くの情報を得ることができるので、ここではメモ書きに留めておく。

タグ:特許権

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